冬の早朝、何か叫ぶような訳の分からない電話が、、。イタズラ?と思った瞬間、「おばあちゃんが、、」という一言で、母に何かあったことを告げる娘の声だとわかりました。
もうすでに意識もなく呼吸も止まった母を見つけ、パニックになった娘が、とっさに実家に電話をかけてきたのです。
すぐに119番に電話するよう伝え、大丈夫だからと言うと、「昨日は友達と出かけ、帰ってきたのが遅く、おやすみなさいも言ってなかった…」、と呟いた娘の声が胸に染みました。
その後、冷静に戻った娘は、救急隊の指示に従い心臓マッサージをし、病院で医師が死亡を確認するのを見届けたりと、近くに住んでいた妹が駆けつけた時には、しっかり落ち着いていたようです。
見事に潔く逝った母に、私達は悲しみながらもどこか感心したりと、慌ただしいお通夜、葬儀を終えた一日でした。
私も母のことが大好きで、娘が一緒に楽しく暮らしてくれていたことは本当に有り難かったのですが、この一件で随分辛い思いをさせ、娘の心に深い傷をつけたようで、パニックになった娘の電話の声が心から離れませんでした。
その夜、ふとんに入ってから、娘の姿をイメージして、『言葉』を何度も何度も繰り返し使いました。
『すそいおん』・『すそいおん』・『すそいおん』…
真剣に唱えながらいつのまにか眠りました。
すると翌朝、娘がおばあちゃんの夢を見たと。
「私はあんなに大変な思いをしたのに、おばあちゃんは、おじいちゃんと一緒にすごく楽しそうにしてたよ」とのこと。
その顔が何か明るく吹っ切れた感じで、娘なりに乗り越えてくれたんだなと、ホッとしました。
わたしにとっては、『すそいおん』という言葉が持つ何かの力を確信できた、忘れられない出来事です。
リンデン(鹿児島県/60代)